2025年シーズン、F1の公式タイムキーパーとして新たに選ばれたのはスイスの高級時計ブランド「タグ・ホイヤー」。F1ファンはもちろん、時計ファンの間でも注目を集めています。本記事では「タイムキーパー」の役割から、タグ・ホイヤーのモータースポーツとの関係、さらにはタグ・ホイヤーを擁するLVMHグループと鈴鹿サーキットでの広告展開までを幅広く解説します。
F1におけるタイムキーパーとは?その役割と歴史
タイムキーパーとは?F1におけるその重要な役割
F1レースでは、マシン同士が1000分の1秒を争う超高速の世界が繰り広げられています。こうしたレースにおいて、正確な「タイム計測」はレースの公正性と競技性を支える極めて重要な要素です。F1における「公式タイムキーパー」とは、各マシンのラップタイム、区間タイム、スタートやピットインのタイミングなど、あらゆるデータをミリ秒単位で正確に記録・配信する企業のことです。
歴代のF1公式タイムキーパー一覧とその変遷
これまでF1のタイムキーパーを務めてきたのは、ロンジン、オメガ、ホイヤー(現タグ・ホイヤー)、Hewlett-Packard、IBMなど、多岐にわたるブランドです。近年ではロレックスがその座にありましたが、2025年からタグ・ホイヤーが就任し、F1との新たな時代を切り開きます。
タイムキーパーに就任するメリットとは?ブランド価値の向上
F1公式タイムキーパーの座は、単なる広告露出以上の価値を持ちます。ブランドは「精密性」「スピード」「信頼性」といったF1のイメージと強く結びつき、製品の魅力やブランド力を世界中にアピールできます。また、F1限定モデルのリリースやグッズ展開、イベント開催など、マーケティング面でも大きなリターンがあります。
日本の時計メーカーはF1公式タイムキーパーになったことがある?
2025年時点で日本の時計メーカー(セイコー、カシオ、シチズンなど)がF1の公式タイムキーパーを務めた実績はありません。
しかし、セイコーはオリンピックや世界陸上でのタイムキーパーを長年務めており、国際的な評価は非常に高いです。
また、カシオは「レッドブル・レーシング」とのスポンサー契約を通じ、F1との密接な関係を築いてきました。今後、日本メーカーがF1公式タイムキーパーに名を連ねる日が来るかもしれません。
F1タイムキーパーの計測ミスは発生する?
F1でタイムキーパーによる計測ミスや事故があった事例は過去にもあります。特に、タイミングシステムや計測機器の不具合が原因で一時的に問題が発生することがありました。以下はそのいくつかの例です。
- 2018年ベルギーGP(スパ・フランコルシャン)
予選で、タイムキーパーシステムの不具合が発生しました。特定の車両のタイムが正確に記録されず、予選結果が正しく表示されない事態が起きました。これにより、修正と再計測が行われましたが、最終的に結果は修正されました。このレースでは、F1のタイム計測を担当している”TAG Heuer”(タグ・ホイヤー)のシステムが問題を引き起こしたと報じられました。 - 1999年アメリカGP(インディアナポリス)
このレースでは、レースの終盤でチェッカーフラッグを受けたドライバーのタイムが誤って計測され、混乱を引き起こしました。問題の原因はタイミングシステムの不具合でしたが、最終的には修正され、正しい順位が発表されました。このレースでも、計測に関わっていたのは”TIMES”(タイムズ)という企業で、タイムキーパーとして担当していました。 - 1997年ヨーロッパGP(ヌーベルトリンク)
ラストラップで、競技の途中でセーフティカーが出動した際に、タイム計測が一時的に停止し、順位に影響を与える事態がありました。このケースもタイミングシステムが原因ではなく、レースの運営に関連する調整でした。こちらのレースでは、タイム計測に関わっていたのは”Electronic Timing Systems”(エレクトロニック・タイミング・システム)という企業でした。
このような事例では、最新の技術を用いた計測システムがあるものの、機器の不具合や人為的ミスが生じることもありますが、通常は問題が発覚後、すぐに修正されることが多いです。また、近年ではシステムの精度と安定性が格段に向上しており、こうしたトラブルは少なくなっています。
タグ・ホイヤーとF1との深いつながり
タグ・ホイヤーとレッドブル・レーシングのパートナーシップ:F1の進化を共に
タグ・ホイヤーは、2016年からレッドブル・レーシングと公式パートナー契約を結び、チームの腕時計スポンサーとしてF1の最前線に関わってきました。
さらに注目すべきは、2016年~2018年にかけて、レッドブルが使用していたルノー製エンジンに「TAG Heuer」のバッジネームが付けられ、「TAG Heuer Power Unit」としてグランプリに参戦していた点です。
これは時計ブランドとしては異例の試みで、タグ・ホイヤーのF1への強いコミットメントを象徴しています。ブランドの「精密さ」「挑戦精神」「スピード」の価値観が、レッドブル・レーシングのイメージと見事に融合し、数々の勝利を共に刻んできました。

タグ・ホイヤーとアイルトン・セナ:永遠のパートナーシップ

伝説のF1ドライバー、アイルトン・セナとタグ・ホイヤーの関係は今なお語り継がれています。特にセナが着用していた「タグ・ホイヤー S/el」シリーズは1990年代に日本でも爆発的な人気を誇りました。彼の精神はタグ・ホイヤーの「Don’t Crack Under Pressure」というスローガンと強く結びついており、限定モデルは今もコレクターにとって垂涎の的です。
タグ・ホイヤー S/el(セル)とは?1990年代に日本でブームを起こしたF1モデル
1990年代の日本で大ヒットした「タグ・ホイヤー S/el(セル)」は、F1人気とアイルトン・セナの影響で圧倒的な認知度を誇ったモデルです。S字型のブレスレットと頑丈なボディ、スポーツとエレガンスを両立したデザインは多くのファンを魅了しました。今なお中古市場では高い人気を維持しており、タグ・ホイヤーの歴史における象徴的なモデルといえるでしょう。

タグ・ホイヤーの歴史とモータースポーツへの貢献
タグ・ホイヤーの歴史は1860年、スイスでの創業に始まります。創業者エドワード・ホイヤーは、精密なクロノグラフの開発に尽力し、1916年には100分の1秒まで計測可能な「マイクログラフ」を発表。これがモータースポーツとブランドのつながりを強固にしました。以後、F1やル・マンなどとのパートナーシップを重ね、レーシングと時計という2つの世界を結び続けています。
LVMHグループとF1戦略:タグ・ホイヤーの背景にある巨大企業
LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)とは?ラグジュアリーの巨人
LVMHは世界最大級のラグジュアリーグループで、ファッション、香水、時計、酒類など70以上のブランドを展開しています。時計部門にはタグ・ホイヤーの他、ウブロやゼニスも属しており、それぞれが異なる魅力を発信。F1との連携を通じて、グループ全体の高級感と革新性を世界に発信しています。
タグ・ホイヤーを支えるLVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン・ジャパンとは
タグ・ホイヤーは現在、世界最大のラグジュアリーグループであるLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)傘下のブランドです。LVMHの日本法人である「LVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン・ジャパン株式会社」は、国内での販売・広報活動を展開し、ファッションや時計、酒類など多彩な分野で影響力を持っています。
鈴鹿サーキットにルイ・ヴィトン広告が増えた理由:F1 × LVMH戦略
2025年の日本グランプリでは、鈴鹿サーキットにルイ・ヴィトンやヘネシーなど、LVMHグループのブランド広告が多数登場しました。これはタグ・ホイヤーのF1公式タイムキーパー就任に合わせた、グループ全体によるブランド戦略の一環です。F1というプラットフォームを通じて、ラグジュアリーブランドの世界観を広く発信する取り組みが加速しています。
総括:F1とタイムキーパーの重要な関係
F1におけるタイム計測は、競技の公正性を保ち、レースの精度を支える非常に重要な要素です。これまで数々の名ブランドがF1の公式タイムキーパーを務め、タイム計測技術の進化をリードしてきました。特に、タグ・ホイヤーはその精密な技術力でF1と深いつながりを持ち、数多くの歴史的瞬間に立ち会ってきました。
タイムキーパーが担う役割は単なる時間計測にとどまらず、ブランドの価値向上やマーケティングにも大きな影響を与える重要なポジションであることが分かります。また、過去には計測ミスが発生することもありましたが、最新技術の進化によって、そうした問題は次第に減少し、より高精度なタイムキープが可能になっています。
2025年からはタグ・ホイヤーが新たなF1公式タイムキーパーとしてその役割を担い、ブランドの誇る精密性と革新性をF1の世界にさらに広めていくことでしょう。タグ・ホイヤーのF1へのコミットメントは、レースの進化とともにブランド価値を高めるとともに、モータースポーツの魅力をより多くの人々に伝える重要な手段となっています。
今後、日本の時計メーカーがF1の公式タイムキーパーに名を連ねる日も近いかもしれません。F1とタイムキーパーとの関係は、競技とブランドの両方にとってこれからも注目すべきポイントであり、その動向がますます楽しみです。
